1.論文の主張:日本の安全保障政策における最近の変化、とくに冷戦後における自衛隊の海外派遣の拡大は、日米同盟における集合的アイデンティティの形成を反映している。 2.集合的アイデンティティの概念 定義:非暴力と相互援助における相互信頼に基づく他国との一体感(安全保障共同体の基盤) 操作化:態度と行動の両側面を分析するとともに、ほかのアイデンティティとの関係を検討する。 資料:首脳会談の共同声明や共同宣言、安全保障協議委員会の共同発表、防衛白書、他 研究方法:内容分析(部分的に、コンピュータ・プログラムの利用) 3.分析結果 集合的アイデンティティの態度面:自由と民主主義という基本的価値を踏まえて、外部の脅威、戦略目標、および役割と任務に関するコンセンサスの領域が冷戦後に拡大している。 集合的アイデンティティの行動面:政策協議、共同研究、および費用分担の分野において防衛協力が冷戦後に強化されている。共同訓練の回数については、航空自衛隊の減少分を除くと、ほぼ横ばいである。 日本のアイデンティティ:冷戦時代において顕著であった「西側の一員」や「経済大国」の認識が、国際二極構造の崩壊や日本経済の停滞により、冷戦後は「米国の同盟国」に取って代わられつつある。 自衛隊の海外任務の拡大:国際平和協力や極東有事での兵站支援などの米国の期待を反映している。 4.今後の計画:研究成果は、米国の国際学学会(International Studies Association)の年次大会(サンディエゴ、平成18年3月25日)で口頭発表した。その発表に対するコメントも考慮して改訂した上で、平成18年度中に学術雑誌(英文)に投稿する予定である。
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