自衛隊のイラク、東ティモール、シリア(ゴラン高原)における活動は、いずれも平和構築の一環としての軍事組織による活動にあたる。こうした平和構築の活動は近年、注目されるが、軍事組織と国連やNGOの文民組織が共同で活動を行う場合が多い。しかし軍事組織と文民組織との関係のあり方、つまり「平和構築支援における民軍関係(Civil-Military Relations)」はその功罪をはじめ大きな議論のテーマになっている。自衛隊の活動も東ティモールやイラクにおいてはこの点が一つの課題としてあった。そこで、17年度はこの点の分析を試みた。 軍隊が行う民生支援の実際とその考え方を知るため05年10月23日から28日までデンマーク陸軍兵站兵站学校(オールボー市)で開かれたCIMIC(Civil Military Cooperation)研修コースに参加した。欧州の軍人向けの研修であったが、例外的に文民としての参加を許可された。 CIMICの定義やNATO、UNのCIMICドクトリン、技術的ノウハウ・要領を学ぶと同時に、CIMICの具体的な一環であるアフガニスタンのPRT(地域復興チーム)も取り上げられ、CIMICを実施するシミュレーションもあった。 平和構築支援においては基本的に民と軍が協力する意味はあり、その必要性があること、特に紛争状態ではまず軍による活動が先行し治安確保と緊急人道支援をして後、文民の支援組織が入るという役割分担が合理的であること、軍の立場で行う民生支援はあくまで軍のミッションを達成するための一手段であること、したがってミッションが敵の撃破であるなら民生支援はそのための手段に過ぎず、民生支援を目的とする文民の支援組織との間で齟齬が生じること、したがって、平和構築支援においては軍事組織と文民組織がミッションを共有し、統合された構造が必要であることなどが、主な知見として得られた。
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