研究概要 |
平成16年度に続き、代替的な財政・金融政策ルールと均衡の不決定性の関係を調べると共に、選好構造および生産技術と財政・金融政策の効果の関係についても検討を行った。まず近刊予定の共同論文、"Technology, Preference Structure, and Growth Effect of Money Supply"(板谷・三野)において、生産技術の収穫逓増の程度および選好の凸性の程度が、貨幣供給が経済成長におよぼす効果にどのような影響を与えるかについて詳細に分析した。また貨幣供給政策の成長効果と均衡の不決定性の間には、システマティックな関係が成立しないことも確認した。さらに現在投稿審査中の共同論文、"Tax Incidence in Dynamic Economies with Externalities and Endogenous Labor Supply"(板谷・三野)においては、労働供給を内生化した成長モデルを用いて、課税の帰着効果が均衡の不決定性の存在にどのように影響されるかについて厳密な検討を行った。その結果、課税政策の効果に関しては、貨幣供給政策と異なり、均衡の不決定性の有無と政策効果に明確な対応関係が存在することが確かめられた。 以上の共同研究に加え、研究代表者個人は、近刊の論文、"Voracity vs. Scale Effects in a Growing Economy without Secure Property Rights"において、所有権が確立していないもとでの均衡の不決定性と政策効果について分析した。なお同じ問題をより一般的な設定のもとで論じるために、研究協力者の板谷教授と新しい研究プロジェクトを始めている。また、土居潤子氏との既刊の共同論文では、知識の部門間波及が存在する場合のR&D政策の効果を論じ、板谷教授との共同研究の結果を異なる枠組みに拡張する試みを行った。
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