研究概要 |
本研究では、主として金融政策と財政政策の効果が均衡の不決定性が生じる場合と均衡が一意に決まる場合ではどのように異なるかを検討した。また代替的な財政・金融政策ルールと均衡の不決定性の関係を調べると共に、選好構造および生産技術と財政・金融政策の効果の関係についても検討を行った。まず近刊予定の共同論文、"Technology, Preference Structure, and Growth Effect of Money Supply"(板谷・三野)において、生産技術の収穫逓増の程度および選好の凸性の程度が、貨幣供給が経済成長におよぼす効果にどのような影響を与えるかについて詳細に分析した。また貨幣供給政策の成長効果と均衡の不決定性の間には、システマティックな関係が成立しないことも確認した。さらに現在投稿審査中の共同論文、"Tax Incidence in Dynamic Economies with Externalities and Endogenous Labor Supply"(板谷・三野)においては、労働供給を内生化した成長モデルを用いて、課税の帰着効果が均衡の不決定性の存在にどのように影響されるかについて厳密な検討を行った。その結果、課税政策の効果に関しては、貨幣供給政策と異なり、均衡の不決定性の有無と政策効果に明確な対応関係が存在することが確かめられた。 以上の共同研究に加え、研究代表者(三野)は、2005年度に刊行された2本の論文において、技術の波及効果を許す内生的成長モデルと、内生的職業選択を仮定する世代重複モデルという既存研究ではあまり分析されてこなかったフレームワークを用いて政策効果と均衡の不決定性の関係を分析した。また研究分担者(板谷)も、環境汚染が負の外部性を生むような成長モデルと、内生的技術進歩を前提とする成長モデルというこれも既存研究では扱われていない枠組みの中で、同様の分析を行い、いくつかの興味深い結果を得た。
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