研究概要 |
本年度は,前年度に行った作業を継続するとともに,ロシアのシャドウ・エコノミーに関するマクロ・レベルでの分析を行うことを主たる課題とした。 具体的には,以下の計画を立てた。 (1)ロシアのマクロ経済レベルでの生産と雇用におけるシャドウ・エコノミーの位置づけと特徴の確認。 (2)シャドウ・エコノミーにおける生産と雇用を識別したうえでの,産業構造と就業構造に関する分析のアップデート。 (3)シャドウ・エコノミーの比重が高い都市部の商業と農村部の農業部門に関する制度的分析。 (4)ロシア統計当局・専門家からの情報収集,国内外の学会等における発表の準備。 このうち,今年度において,具体的に取り組むことが出来たのは,(1)の作業の継続,(2)の作業の一部,(4)の作業の継続分であった。 当初の予定では中心に位置づけられていた,シャドウ・エコノミーの中の,「インフォーマル・セクター」の雇用を巡る問題を中心にしたマクロ経済レベルの分析と,同セクターの都市部の商業部門と農村部の農業部門における実状に関する制度的な分析に,十分取り組むことができなかったが,以下の諸点については,ロシアの現状を捉えることができた。 第一に,ロシアにおけるシャドウ・エコノミー一般の統計データの定義と作成方法それ自体が発展途上であり,これらを正確に跡付ける作業自体が学術的にも大きな意義を有するが,これをある程度達成できた。第二に,調査の過程で,シャドウ・エコノミーの計測に関しては,国際的に見ても進んでいると思われるロシア統計当局における作業においても,かなり重大な統計作成方法上の問題点を明らかにすることができた。
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