研究概要 |
本研究では、真の需要表明が支配戦略であるピボタル・メカニズムと真の需要表明がマキシミン戦略となるマキシミン・メカニズムについて、メカニズムの利得構造と、実験結果から抽出した個人の戦略行動様式との関係を調べることによって,両メカニズムの真実表明誘発性能に関する問題点を明らかした。以下に具体的な研究成果を記す。 ・従来の実験では、意思決定主体を全て人間としていたが、本研究では2主体の一方をコンピュータが戦略を選択するシステムとし、実験を行った。この実験手法は、被験者の戦略行動の固定化を促し、個人の戦略選択行動分析に非常に有効であった。 ・各被験者の真の評価値ごとの各戦略の選択割合からなるベクトルをひとつの戦略行動パターンデータとし、自己組織化マップ(SOM)とクラスター分析を利用して個人の戦略選択行動の類型化を行った。2主体3戦略の意思決定環境下では、ピボタル・メカニズムにおいては誘因両立性の鍵となるClark税を無視する行動(I 行動)が多く、マキシミン・メカニズムでは期待利得最大化行動(EB行動)が多いことがわかった。これらの結果についてさらに検証するため、主体数は2のまま戦略数を3,5,8,13と増加させた意思決定環境下での実験、および被験者が利得構造を完全に理解した場合の戦略行動を知るために利得表を提示した実験を行った。実験の結果から、ピボタル・メカニズムでは、戦略数が増えれば1行動も増えるが、意思決定環境および実験環境を変えることによって、真実表明誘発性能が高まることが明らかになった。マキシミン・メカニズムでは、被験者が利得構造を完全に理解した場合においても戦略行動は固定せず、支配戦略が存在しないがゆえにマキシミン・メカニズムは真実表明誘発性能を高めることが困難であると結論づけた。
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