研究課題
一般均衡理論の制度的枠組としてのワルラス応用経済学の意義を、思想史的なアプローチで解明するという研究目的を遂行するために、応用経済学における競争概念や体制論を、ハイエクやオーストリア学派の視点から再考した英語論文「ハイエクの視点からみたワルラスの組織された自由競争概念」を、初年度に作成したものからさらに発展させ、6月にアメリカで開催された北米経済学史学会(HES)で報告し、オーストリア学派の専門家たちからレビューを受けた。この報告論文の結論は、ワルラスの応用経済学に注目すれば、ワルラスがハイエクの定義する設計主義者にも、新古典派にも属さないというものであるが、それをさらに検証するために、ハイエクが「設計主義」の源泉として批判した「フランスの伝統」と、ワルラスとの関係を探るのが、本年度の主な目標であった。当初の研究計画では、とくにサン=シモン主義のワルラスへの影響を明らかにすることを目標としていたが、考察の対象をさらにひろげ、ケネー、カナール、J.B.セイ、サン・シモン、デュピュイ、クルノーを中心とした18-19世紀フランス学史の流れを、ワルラス応用経済学における「組織された自由競争」概念の形成過程として読み込み、同概念の独自性を明らかにすることにとりくんだ。その成果について、「フランス経済学史の視点-フィジオクラシィからワルラス『組織された自由競争』へ」という仏語論文にまとめ、同タイトルのセミナーを、スイスのローザシヌ大学ワルラス・パレート研究所、フランスリヨン第2大学にて開催し、専門家たちからのレビューをうけた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Les Cahiers du CERAS, Hors Serie. 4
ページ: 61-69
彦根論叢(滋賀大学) 356
ページ: 161-179