研究課題
基盤研究(C)
一般均衡理論の制度的枠組としてのワルラス応用経済学の意義を、思想史的なアプローチで解明するという研究目的を遂行するために、まずはワルラス応用経済学における競争概念を、ハイエク的な視点から再考することにとりくんだ。ハイエクは、ワルラスの純粋経済学に由来する新古典派的な競争概念を、社会主義経済計算論争の後、「設計主義」に結び付けて批判した。本研究では、そのときに彼が設計主義の源泉とした「フランスの伝統」に着目した。そしてワルラスの純粋経済学ではなく、応用経済学の競争概念「組織された自由競争」に注目し、それを、ハイエクの言う「フランスの伝統」を代表するデカルト主義やサン=シモン主義に照らして、その特徴を再考すると、ワルラスは、ハイエクの定義する設計主義者であるどころか、むしろハイエクと近い主張をしており、ワルラスの競争概念は、一般1的な新古典派の競争概念とも異なる独自性を持っていることが明らかになった。そのことをさらに検証するために、ワルラスの応用経済学を、サン=シモン主義からの影響だけではなく、より広い意味でのフランスの伝統の中で、考察することにとりくんだ。すなわち、ケネー、カナール、J.Bセー、サン=シモン、デュピュイ、クルノーを中心とした18-19世紀フランス経済学史の流れを、ワルラス応用経済学における「組織された自由競争」概念の形成過程として読み込み、同概念の独自性と思想的意義を明らかにした。その際に、マルクスやシュンペーター・が考える「フランスの伝統」とハイエクのそれとを比較検証し、フランス経済学史についての既存の解釈に対しても、異なる見解をうちたてた。すなわち、ワルラス経済学をステレオタイプ的な新古典派的な解釈から解放するためには、フランス経済学史研究そのものに新しい光を投じる必要があるのである。
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彦根論叢 (滋賀大学) 356
ページ: 161-179
The Hikone Ronso 356
Les Cahiers du CERAS, Hors Serie 4
ページ: 61-69