研究概要 |
今年度も引き続き,The Works of Henry SidgwickおよびそのCD-ROM版を用いて,Methods of Ethics(第1版・第7版),Principles of Political Economy(第3版),Elements of Politics(第3版)における,経済,政治および倫理の関係に関するシジウィクの議論を整理した。 6月9日から6月12日までイギリスのスターリング大学を訪れ,そこで開催されたヨーロッパ学史学会年次大会に出席し,論文'The ‘British fiscal-military state and the political economy of public finance in the classical era'を報告した。討論者のAnthony Brewerおよびフロアと活発な議論をおこない,有益なコメントを得た。 12月3日および12月4日に,東京で開かれた研究会に出席し,論文'The political economy of public finance as a political language of the Victorian Empire'を報告した。この研究会は,経済学史学会の会員と,イギリスの帝国史研究者(Peter Cain, Martin Daunton, Anthony Howeなど)とが共同して,大英帝国の形成と衰退のプロセスの中で,政治的言語としての経済学がどのような影響を受け,また影響を与えたかをさぐる研究会であり,論文集British Empire and Economic Thought(仮題)の出版を目ざしている。扱う時代は18世紀中葉から20世紀中葉までであるので,帝国問題に対するケンブリッジの経済学者の見解も検討対象となる。今回発表した論文では,直接シジウィクに言及しなかったが,全体の編集方針に従いながら,帝国運営に関するシジウィクの見解も含める予定である。 また,今年度は,私の著書The Political Economy of Public Finance in Britain 1767-1873が日経・経済図書文化賞を受賞した。
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