研究概要 |
海南,チベットを除き,重慶を四川に含めた中国の28一級行政区(省・直轄市・自治区)の1952-2003年の実質域内総生産,資本ストック,就業者数のデータセットを作成し,ソロータイプの新古典派成長モデルを地域別に推定した.モデルはパラメータの時変性を許容し,推定は状態空間モデルのマルコフ連鎖モンテカルロ法で行った. 推定結果によれば, 1.技術進歩率の時変性は大きく(外生パラメータである貯蓄・投資率の時変性も大きく), 2.経済が定常状態に接近して行くというソローモデルの特徴は観察されたが,成長率は技術進歩率によって決まる部分が大きく,定常状態に接近して行く過程で上乗せされる部分は小さかった. また, 3.各地域が同じ定常経路に向かっているようにはみえず,定常成長率の地域差も小さくなかった. ただし,技術進歩率の時変性をランダムウォークによって導入したためと思われるが,その点描定値の動きはプロージブルであったが標準偏差が大きなものも多く,強い議論は難しいという問題が残った.また,ソローモデルで重要な役割を演じ,われわれの推定結果でもそのことが確認された技術進歩率が何によって左右されるのか,それを統牡的に検討することも当初計画したのであるが,時間の制約で未完に終わった.推定方法の改善とともに,残された課題としたい.
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