研究課題
研究目的は、戦後日本の国内長距離人口移動の決定因とその変化を、男女別あるいは年齢階級別に、特に重要な分析課題を中心に明らかにすることである。今年度の研究実施計画に対応した研究成果は、以下のとおりである。1.25-29歳:(1)社会環境アメニティの作用:1970年については、「人口1人当り実質個人所得」は、都会的生活様式と硬く結びついて長距離人口移動に作用していると考えられる。しかし、住宅周辺社会環境アメニティである「都市公園面積」、「刑法犯」などの各指標については、1970年、1980年のそれぞれについて、いずれも5%有意とならず、説明力を認めることはできなかった。(日本計画行政学会第28回全国大会、経済地理学会関西支部10月例会)(2)地価の作用:単純な時系列回帰分析と人的資本モデルの応用により、地価を考慮した経済学的な説明によって、長距離人口移動における還流移動をより合理的に説明することが示された。しかし、還流移動が最も激しかった1975-80年に人的資本モデルは十分な説明ができなかったという問題点が残された。(日本地域学会第42回大会)2.65歳以上の高齢者:(1)前期高齢者の決定因:1990年国勢調査では、温暖な気候を求めるとする気候モデルが有意な説明力を持ったが、2000年国勢調査では、低い物価を求める物価モデル(実質所得モデル)が有意な説明力を持った。(2)後期高齢者の決定因:「子供との同居要因」による説明を検討した。重力モデルの説明変数のうち、到着地の人口を子供世代の人口規模に変える方法で、説明力が向上した。(日本人口学会第57回大会)3.団塊の世代:団塊世代の1950年から2000年の累積純移動数(地方圏の流出超過数、3大都市圏の流入超過数)は、187万人程度と推計されるなど、多数のファインディングがあった。しかし前後の世代と比較して、団塊の世代特有の移動行動は認められなかった。(日本人口学会第57回大会)4.自然動態と社会動態の関係:社会動態が自然動態に影響するという重要だが忘れられがちな現象を、全国データ及び岐阜県笠松町の事例で啓蒙的に論じた。(『季刊 中国総研』)
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Review of Economics and Information Studies(岐阜聖徳学園大学経済情報学部紀要) Vol.6, No.3-4
ページ: 23-52
季刊 中国総研(社団法人中国地方総合研究センター) Vol.9-3, NO.32
ページ: 15-20