本研究は、大規模なアンケート調査のデータに基づいて、最近の中小企業の共同研究開発および産学官連携の実態を明らかにし、さらにそのような連携の組織・契約パターン等が参加企業の経営成果・技術成果にどのように影響しているかを計量的に検証することを目的としている。16年度の前半には、これまでの関連文献を整理し、分析枠組みを明確化した。年度の後半にはアンケート調査を設計し、(株)帝国データバンクおよびビュロー・ヴァン・ダイク社の企業データベースから全国の従業者数20人以上の製造業企業約1万社を対象企業として抽出し、アンケート調査を実施した。現在は、調査票を回収しているところである。 また、アンケート調査の準備・実施と並行して、経済産業省「企業活動基本調査」の個票データを取得し、企業間の共同研究開発が参加企業のその後の技術成果にどのように影響するかを、中小企業と大企業のサンプルに分けて計量的に分析した。その結果、自社の研究開発集約度や保有特許数等の条件をコントロールしても、他社との共同研究開発は、中小企業において、特許と実用新案に代表される知的財産の形成を促進すること(特許等の新規取得確率および保有増加数に有意な正の効果)が検証された。共同研究開発にはこのような直接の効果だけでなく、自社研究開発の効率性(特許等の技術成果への影響)を高める間接的な効果があることも確認された。このような間接効果は大企業の共同研究開発には検証されず、また大企業では共同研究開発の直接効果も4年以上は持続しない。
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