本研究は、大規模なアンケート調査のデータに基づいて中小企業の共同研究開発および産学連携の実態を明らかにし、さらにそのような連携の組織・契約パターン等が参加企業の経営成果・技術成果にどのように影響しているかを計量的に検証することを目的としている。平成17年度は、製造業企業約1万社を対象として昨年度末に実施したアンケート調査の結果を取りまとめ、大企業と中小企業の取り組みの違いに関する分析、中小企業の産学連携の要因および成果に関する分析、中小企業の産学連携の相手選択に関する分析を行った。 大企業と中小企業の共同研究開発および産学連携への取り組みについては、これまでは大規模なサンプルに基づく包括的な比較研究が乏しかったが、本研究によって、中小企業のほうが1)社長の直接関与の程度が高く、2)契約を結ばないことが多く、3)成果の特許出願が少ないことが分かった。また、産学連携については、相手機関のタイプや立地条件、探索方法について大企業と中小企業の相違が顕著に見られた。 中小企業の産学連携の要因については、実施企業と非実施企業の特徴の比較分析から、規模が大きく、ふだんから研究開発に積極的に取り組み、また経営者が理系出身である企業のほうが、産学連携に取り組む可能性が高いことが分かった。また、産学連携を行った中小企業のうち、成果の特許出願に至った企業は、自ら研究開発を積極的に行い、経営者が理系出身であり、遠隔地の国立大学と連携する傾向が強く、連携相手を学会のような専門的ネットワークを通じて見つけ、また連携相手を強くコミットさせる傾向が見られた。 中小企業の産学連携については、さらに、経営者の学歴(高卒・大卒・院卒、文系と理系の違い)が、相手機関のタイプ(国立大学、公設試験場等)、立地(近隣か遠隔地か)、探索方法(取引先の紹介、学会など)に有意に影響することが明らかになった。
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