研究概要 |
平成18年度は,プロジェクト最終年度として,(1)2005年上半期にロシアで実施した企業アンケート調査結果の実証分析及び(2)ハンガリー,チェコ,ロシア3カ国を主な研究対象とした移行経済諸国のコーポレート・ガバナンス問題に関する国際比較研究の成果を積極的に公表・刊行する年となった。その概要は以下の通りである。 前者については,ロシア側研究パートナーである国立大学高等経済院(Higher School of Economics)の研究者らと共に,2006年9月に英国ブライトン市で開催された欧州比較経済学会世界大会において合同パネル報告を行った。また,岩崎は,同年10月に神戸大学で行われた日本比較経済体制学会秋季大会の場でも「企業形態と組織行動:ロシア株式会社制度の実証分析」と題する研究報告を行った。これら学会の場で公表された研究論文は,一橋大学経済研究所より二分冊の論文集として出版された。また,各論文は,移行経済研究の主要な国際雑誌に現在投稿中であるか,ないしは英語またはロシア語の学術雑誌に公表済である。 後者の研究成果は,英国の有力学術出版社Palgrave Macmillan社より,2007年3月にCorporate Restructuring and Governance in Transition Economiesと題する学術図書として刊行された。本書には,ハンガリーの企業リストラクチャリングにおける外国直接投資の役割及びロシア企業のガバナンス構造に関する岩崎の2本の論文,並びに旧社会主義諸国における企業ファイナンス問題を論じた杉浦の論文の他に,イタリア,ロシア,チェコ,ハンガリー,日本の研究者による論考全11本が収められている。このような形で移行経済諸国の企業再建やコーポレート・ガバナンス問題を取り扱った国際比較研究は極めて稀少であり,本書の刊行は,その意味で移行経済研究分野に大きな学術的貢献をもたらしたと考えられる。
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