研究課題
通貨・金融統合に関する理論の代表的なものはマンデルによって開始された「最適通貨圏の理論(theory of optimal currency area)」である。そこでは通貨・金融統合の最適さのクライテリアとして、「ISショックの同期性」、「経済の開放度」、「要素(労働・資本)移動の容易さ」などがあげられている。本研究では、要素移動、特に労働移動の容易さに焦点をあて、アジア太平洋地域の労働市場統合の程度を重点的に研究した。アジア太平洋地域の労働市場統合の程度と進展を分析することにより、最適通貨圏の理論に照らして、今後の通貨・金融統合の進展の容易さを予測するためである。平成18年度は、このテーマに関連した論文を執筆するとともに、11月にはワシントンにある世界銀行や米州開発銀行などの国際機関を訪問し、本テーマの専門家との討論を行った。平成18年度の研究業績は、後掲の諸論文が中心であり、得られた知見のうち主要なものは以下のとおりである。(1)欧州や米州に比較するとアジア太平洋地域の労働市場統合の程度は低いが、近年急速に統合の程度を強めつつある。(2)労働市場統合の進展とともに、最適通貨圏のクライテリアのひとつが満たされる程度が増加しており、したがって、金融・通貨統合の進展が期待できるようになって来ている。(3)しかし、国際労働移動は、特に社会的側面を中心として、さまざまなマイナス要因をも包含するものでもあり、モノの移動やカネの移動ほど順調に増加するとは考え難い。したがって、アジア太平洋地域の労働市場統合をさらに進めるためにはさまざまな社会的条件整備が必要である。
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World Bank Report 4203
Aging and the Labour Market in Japan (Koichi Hamada and Hiromi Kato (eds.))
国際問題 533
ページ: 22-31
Trade Policy and WT0 Accession for Economic Development in Russia and the CIS : A Handbook (David Tarr (ed.))