研究課題/領域番号 |
16530157
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
新海 哲哉 関西学院大学, 経済学部, 教授 (40206313)
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研究分担者 |
岡村 誠 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (30177084)
田中 悟 神戸市外国語大学, 外国語学部, 助教授 (20207096)
田畑 顕 神戸市外国語大学, 外国語学部, 講師 (20362634)
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キーワード | ライセンス契約 / 特許権の執行 / 補完的技術 / Litigation cost |
研究概要 |
本年度の研究では、以下の「11.研究発表」で記した3編の研究論文を執筆した。このうち、第1論文と第2論文で行われた分析と得られた結論は以下のとおりである。 近年、知的財産権の保護は各国で重要な政策である。他方、今日では一財の生産に相当数の技術利用を要する「技術の補完性」が存在する場合が多い。同質財市場で競争する2企業が、互いに完全補完的な2技術の特許権を一つずつ保有するとき、互いの特許侵害によるスピルオーバーと、侵害に対する提訴、訴訟費用、損害賠償などの知的財産権の行使を表すパラメータを明示的にモデルに組み込み、2企業間に結ばれる可能性のあるライセンス契約の態様、またライセンス契約の結果達成される市場均衡での経済厚生が、知的財産権の行使から受ける影響を簡単なモデルで分析した。その結果、知的財産権行使を記述するパラメータに関するある条件下では、クロスライセンス契約が結ばれ、かつ経済厚生上独占より望ましい複占均衡が生ずるが、原告の勝訴確率が2分の1より高く、かつ相対的に原告の訴訟費用のほうが被告の訴訟費用より高いとき、片務的なライセンス契約が両企業により結ばれて経済厚生上複占より劣る独占均衡が成立することを示した。 また第3論文では並行輸入が製薬会社の研究開発動機に及ぼす影響について考察した。知的財産制度の変更を通じ、並行輸入が認められると、独占企業は市場ごとに異なる価格を設定することができない。そのため並行輸入の導入は、一般に利潤の低下をもたらし、企業の研究開発動機に負の影響をもたらすと考えられている。本論文では製薬会社と政府の交渉による現実的な薬価決定過程を明示的に考慮し、並行輸入が製薬会社の研究開発動機に与える影響について再考察を試みた。その結果並行輸入が製薬会社の研究開発動機に正の影響をもたらす可能性があることを示した。
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