研究目的:研究全体の目的は、過疎地域住民の様々な移動ニーズに対して様々な公的移動手段が提供しているミニマム水準を明らかにし、地域の特徴をふまえながら、交通手段の組み合わせによる住民満足度の高い効率的運行パターンを開発すること、及び、わが国の過疎地域で実現可能なナショナルミニマムの保障水準を提示することである。 調査研究の概要:高知県下の3町村への聞き取り調査を行うとともに、2町村(西土佐村、池川町)を対象に公共交通(主に廃止代替バスを対象)に関する郵送調査を実施した。両町村にそれぞれ600通郵送し、西土佐村から297通(回収率50%)、池川町から287通(回収率48%)の返送があった。アンケート内容には、他の調査との比較検討の可能性も考慮して、「バスの利用状況」「バス停へのアクセス(距離)」「乗り合い状況」「バスの必要性」「タクシー利用」「自治体のとりくみの評価」を含めた。 調査研究結果の概要:西土佐村におけるスクールバスとの混乗のとりくみ、またバス料金を100円と300円の2段階に設定したことは住民に幅広く受け入れられており、利用者の増加も一時期見られる。両町村とも大多数がバスを日常の交通手段として利用していないが、9割を超える住民がバスの必要性に支持を表明している。バスの利用は他の地域と同じく移動制約者に特化してきており、その中で利用目的の4〜5割が通院となっている。そこでは、病院からの送迎バス利用との併用が多く、無料の送迎バスの利用に流れる傾向が見られる。バス運行への要望としては、便数の増加が最も多く、両町村とも約3割を占めていること、等が明らかになった。 現時点は分析途中であり、さらに国内の他地域、スウェーデンの農山村地域との比較検討により、住民に支持される効率的運行のあり方、公的に保障するナショナルミニマム水準について解析していく予定である。
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