研究課題
基盤研究(C)
本研究では、薬局の経営において、どのような要因が来局患者数(応需処方せん件数)、収入、利潤、生産性などに影響を与えるのかを明らかにし、現在の薬局の経営環境が、本来の役割を果たしえる状況にあるのか、また、経営上のインセンティブが国民の医療福祉の向上に貢献する方向に則しているかを検討し、最終的には、医薬分業のあるべき姿を議論できるようになることを目的として行われた。主な分析方法とその結果を以下に示す。1.相関分析・患者数と正の相関を示したものは、売上や人員数、在庫などであり、平均待ち時間や応需医療機関数はそれほど高い相関はなく、スタッフの質を反映する変数や過誤・インシデント率など業務の質を反映する変数とは相関が認められなかった。・収入(売上)と正の相関を示したものは、上記とそれほど変わらないが、人件費比率とは負の相関を示した。・売上高総利益率では、技術料比率が正の相関、薬剤料比率が負の相関を示したが、逆に売上高営業利益率では強い相関は認められなかった。また、両者とも特別指導加算算定比率とは相関が認められなかった。2.重回帰分析・患者数や利益率を従属変数とした分析では、特別指導加算や門前ダミーは有意とはならなかった。・また、患者の所得やレセプトデータは、個人情報保護法の施行の関係もあり、多くは収集が困難であったため、代替策として、当該薬局で無記名の患者満足度調査を行い、薬局データとの関連性も検討した。面分業ダミーの符号が正となり、仮説を裏付ける結果が得られた。以上、薬剤師の職能や業務の質に関する変数などが、経営状況を示す変数の変動にそれほど大きな影響を与えていないことから、職能教育や、患者教育、調剤報酬等の制度面など、更に検討していく余地があると考えられた。研究成果としては、患者満足度調査に関する論文は学術雑誌に掲載が決定し、他に現在投稿中のものが1本、投稿準備中のものが1本ある。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
薬学雑誌 127.7
ページ: 1115-1123
YAKUGAKU ZASSHI 127(7)