最近の目覚しい市民社会の台頭によって、市民社会を国際システムにどのように組み入れるかが重要な課題となっていると指摘され、もはや市民社会を考えない国際システムは非現実的であるといわれている。そこで、これまでの伝統的な分析枠組みである「国家・政府-市場・企業」という2セクター・モデルの有効性が低下し、それに代わって「国家・政府-市場・企業-市民社会」という3セクター・モデルが着目されつつある。 本研究では、この3セクター・モデルの有効性を実証するために、その第一段階として、市民社会が国際ビジネスに対して、はたしてどの程度の影響を及ぼしているのかについて、定量的に分析しようと試みた。 市民社会セクターを分析対象とする有効な定量的分析手法は、いまだ確立しておらず、試行錯誤を繰り返す中で、本研究では、以下のような結論を得た。日本・北米・欧州企業を問わず、企業は確かに市民社会の台頭を意識している。しかし、企業は市民社会からの直接的な影響を受けて行動しているというよりはむしろ、企業サイドの要因つまり企業自らの理念や環境対策への姿勢によって行動していると考えられる。 個別には市民社会が企業にかなりの影響をおよぼしている事例は幾つもみられるが、市民社会全体としては、企業セクターへ直接的な影響をおよぼしてはいなく、就業者人口や経済規模はいうにおよばず、影響という点でも、第3のセクターとよべるほどに力をもっていないという結論に達した。 また、今回作成した「企業の市民社会に対する積極性インデックス」と「企業の市民社会との協働可能性インデックス」によると、日本企業と欧州企業との間に、市民社会との関係において定量的に有意な違いが認められた。
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