研究課題
違法コピー問題は、単に違法コピーを法律で規制するのみでは実行力がなく解決しない。今年度の研究では文献調査を行った後に、違法コピーの存在を前提として、企業がコピー・コントロールを実施した場合の効果について、モデルを用いて分析を行った。最初に明らかになったことは、違法コピーの経済厚生に与える効果は、需要関数に依存することである。違法コピーは、権利的に許されるものではないが、経済的に消費者の厚生を高めている効果を持つことは無視できない。その効果を考慮に入れた場合、消費者の限界便益が高い場合には、違法コピーは経済厚生全体を増加させることを明らかにした。次に、コピー・コントロールの効果について分析を行った。まず、違法コピーがない場合に、企業の利潤はコピー・コントロールによって低下することが示された。その原因は、コピー・コントロールによってサービスの便益が低下し、そのことによって、需要の低下をもたらすからである。しかし、違法コピーが存在する場合には、このことは明らかに成立しない。違法コピーを分析するうえで重要な要素は、違法コピーのための取引費用である。この取引費用が低い場合には、コピー・コントロールが経済厚生を高める効果を持つ。そのための条件を明らかにした。最後に、コピー・コントロール導入のインセンティブを分析した。社会的なコピー・コントロール導入へのインセンティブと企業から見た導入のインセンティブは、必ずしも一致するとは限らない。どのような取引費用の場合に、両者のインセンティブが一致し、または一致しないのかを明らかにした。今までこのような分析は行われておらず、コピー・コントロール導入の是非を判断する上で、欠かすことのできない考察である。
すべて 2005
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Working Paper, Faculty of Social Sciences, Waseda University (http://www.waseda.jp/sem-domon01の教員業績参照) 2005-1
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