国有企業改革の成否は中国経済にとって死活の重要をもつが、しかし、どのように改革すればよいか、必ずしも明確ではない。国家所有を温存したままで経営権の拡大を進めるのか、それとも国家所有そのものを変えていくのか。また国家所有を変える場合でも、不特定の人に譲るのか、それとも経営者などの企業内部者に買収されるのか、いろいろな選択肢がある。中国の場合、経営者による企業買収(MBO)が2005年社会的争点となって賛否両論に分かれ、一時凍結されたが、結局当局は新たな条例を発表し、その継続的実行を認めざるを得なかった。 本研究者は本年度、外国資本が経営者による企業買収において果たした役割に注目して研究を進めた。具体的にはビール産業を選んで分析を行った。中国のビール産業は1980年代の急成長で一時800社を有する超分散型の産業構造となった。外国資本が中国市場への本格参入は1990年代前半で、地元企業との合弁が主流であった。 中国ビール産業の市場構造に構造変化をもたらしたのは1990年代後半青島ビールを主とするメーカーによる企業買収に伴う市場集中度の向上であったが、買収活動が急激に行われた結果、経営統合がうまく進ます、財務状況の悪化が深刻化していった。これら中堅企業への外国資本の資本参加がこのような環境の下で実現した。そこて資本所有を背景に発言力を高めた外国資本がインセンティブ制度の一環として経営者による株式所有を認めることになったのである。 なお、本年度は青島ビールを事例研究として上述のプロセスを明らかにした。
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