国有企業改革の成否は中国経済にとって死活の重要をもつが、しかし、どのように改革すればよいか、必ずしも明確ではない。国家所有を温存したままで経営権の拡大を進めるのか、それとも国家所有そのものを変えていくのか。また国家所有を変える場合でも、その株式が市場で売却されるのか、それとも経営者などの企業内部者に買収されるのか、いろいろな選択肢がある。中国の場合、経営者による企業買収(MBO)が2005年社会的争点となって賛否両論に分かれ、一時凍結されたが、結局当局は新たな条例を発表し、その継続的実行を認めざるを得なかった。 問題は経営者による企業買収の価格設定である。MBOが実施される会社では経営者支配が行われているので、実質的に経営者自身が企業資産を評価してその売却価格を設定している。それが国有資産の安売りとの批判や政府の介入を招いてしまうが、それを避けるために企業組織の改編や外資との提携など迂回的手法を通じて私有化が図られている。またその買収資金の調達は買収される企業の配当を当てにしている傾向がみられる。 ただ、中国の上場企業におけるMBOは欧米のそれとは違って経営者の持ち株比率が過半に行かず上場廃止はない。MBO実施後の所有と経営がどう変わっていくのか、とくにその経営パフォーマンスについて今後、追跡的研究を行う必要がある。
|