研究概要 |
本年度は,昨年度までの山形県および米沢市における産業支援策と企業間ネットワークの実態調査に加えて,福島県における産業支援策と起業家の人材育成に関する実態調査を行った. 前者に関しては,昨年度の成果に加えて,とくに米沢市において最も新しく設立された米沢ビジネスネットワークオフィス(米沢BNO)について詳細なヒアリングを行った.米沢BNOは,当該地域で活動してきた従来の企業間ネットワークとは異なり,自治体(山形県,米沢市),情報サービス業,商工会議所,製造業,医師会,労働組合,金融機関などの多様な主体を取り込んでおり,相互学習というよりも,異業種交流によって実践的な次世代産業を当該地域のニーズに合ったかたちで創出しようとしている点に特徴がある.こうした新たな動きが次々に創出される環境として,従来の機械系産業の蓄積に加えて,繊維産業等も密接に関わっていることが明らかになった.その関わりとは,従来のネットワーク環境における相互学習のプロセスで形成されてきた人材の育成ということである. 後者に関しては,福島市に設置されているインキュベートルームに入居している起業家とその支援策に関する調査を行った.ここでのポイントは,企業の設立経緯,起業上の困難,支援策に対する評価である.ヒアリングを行った企業は情報系の企業であり,この業種では起業に際して,経歴として何らかの情報技術教育を受けているものの,それと実際の起業分野とは明確な対応はみられない.また,業務上のトラブル等は,同常的なインキュベートルームでの人的接触によって解決できることが多く,この点でアドバイザーなどの支援策および行政のハード面での支援が高く評価されていた. 最終年度は,以上の結果を踏まえて,補足調査と地域間比較を実施していく.
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