研究概要 |
本研究の目的は,地方圏,なかでも東京圏に近接する東北地域を対象として,製造業企業のみならずソフトウェア等のサービス業,さらに公的支援機関,研究機関(大学・研究所)などを含む複合的な分野の地域的集積(クラスター)において,戦略的な新産業育成とその成長可能性および人材育成システムをいかに構築すべきかを実証的に明らかにすることである. 福島県(福島市,南相馬市),岩手県,大阪府(東大阪市)を対象地域に実態調査を行い,それぞれにおける公的な人材育成支援システムの実態について明らかにした.なお,東大阪市の事例は,大都市の事例となるが,今後の研究展開のための予備作業である. 福島市については福島市のインキュベーションシステムとその実績をソフトウェアおよび情報関連企業へのインタビューによって明らかにし,南相馬市については公的な機械工業の支援施策について行政・製造業企業(企業間ネットワーク等)の両面から詳細な検討を加えた.岩手県については,大学や公的な支援機関によるフォーマルな支援策やインフォーマルなネットワークについて検討し,直接には製造部門への支援がその内実としては人材育成につながっている点を明らかにした. 東大阪市の事例では,機械産業に付随する卸売業者が産業クラスターにおいて担う機能について明らかにした.この成果は,地域間比較研究に本研究を発展させる予備作業と位置づけられる. なお,研究の目的で掲げた理論的パースペクティブについては,地域間比較研究とあわせて,今後の課題としておきたい.
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