研究課題
基盤研究(C)
1990年代前半から近年に至るまで、日本はかつて経験したことのないほどの深刻な金融危機に直面した。日本で金融危機が発生し長期化した背景としてはさまざまな議論があるが、その一つとして不動産業、建設業、ノンバンクなどへの融資や、企業の財テクのための資金提供などの銀行の積極的な貸出行動が挙げられる。本研究では、銀行のガバナンスにおける大株主の役割に注目した。1980年から2000年までの20年間に上場しているすべての銀行の所有構造に関するデータを構築し、その結果はとくに銀行と保険会社が大株主として重要な位置を占め、長期にわたる安定的な株主であることが明らかになった。本研究は、銀行の主要な大株主として銀行および保険会社の銀行経営へのモニタリングの効果を調べた。銀行が効果的にモニタリングされていなければ、銀行経営者は銀行の価値を減じるような過度なリスクをとるという仮説を立てた。推計結果からは、80年代には、銀行、保険会社、非金融法人の所有比率が高いほど、貸出の伸び率が高く、パフォーマンスも悪いということが示された。90年代には、景気が悪化し、不良債権の問題で多くの銀行が破綻するようになった。しかし、実証結果からは、そのような状況に対処すべく、積極的にリストラクチャリングを図るよりはむしろ、銀行、保険会社、非金融法人の所有比率が高い銀行は、そうでない銀行に比べて、貸出の伸び率が高かった。以上のことから、本研究は、主要な大株主が銀行を適切にモニタリングしていなかったと結論することができる。
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Beyond the ‘Lost Decade' Volume 1: The Lesson of Economic Crisis (edited by Institute of Social Science, The University of Tokyo)(University of Tokyo Press) Volume 1, Chapter 2
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