研究概要 |
Development, Socio-Economic Infrastructure and Natural Disasters Hideki Toya and Mark Skidmore 本稿では、経済が発展することによって、どの程度自然災害によって生じる人的・経済的被害が軽減されるかについての検証が行われている。具体的には、全世界を対象とした1960年から2003年にかけての自然災害によって発生した人的被害(死者数)および経済的被害(被害額/GDP)のデータを用いて、これら2つの被害指標が、経済発展の指標(一人当たりGDP、学校教育年数、(輸出+輸入)/GDP、政府の規模、金融制度の発達)とどのような関係にあるのかを、最小自乗法に基づいて実証分析を行った。 得られた結果は、所得水準が上昇すると、人的・経済的被害ともに減少する傾向にあることを示すものであった。特に、所得が自然災害の被害を軽減させる効果は、OECD諸国に顕著に見られた。一方、発展途上国では、所得水準よりも、学校教育年数、(輸出+輸入)/GDPが自然災害の被害に有意なマイナスの影響を与えており、これらの国々では社会的インフラストラクチャーの影響が大きいことが確認された。また、自然災害を比較的予測可能な気候的災害(台風、ハリケーン、洪水など)と予測が困難な地質的災害(地震、火山、地滑り)に分けて検証を行ったところ、経済発展の指標との関係において差異が見られ、予測可能な気候的災害による被害の方がより経済発展指標と強いマイナスの関係にあった。この結果は、人々はあらかじめ予測できる災害に関しては、その被害から身を守るために合理的行動を行っていることを示すものである。 我々の分析結果は、自然災害による被害を軽減するためにどのような政策が有効であるのかを提示するものであり、特に発展途上国では政府の役割が大きいことを示すものである。
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