バンコク・ファッション・シティ計画とは、ファッション産業関連3業種の国際競争力強化を狙った産業政策である。本報告の第1章では、バンコク・ファッション・シティ計画とは何かを追究する。本報告では、11のサブ・プロジェクトの目標と課題を示し、現在、どのように取り組まれているかを解説した。同計画は「人の創造」や「まちの創造」だけでなく、何よりも「ビジネスの創造」である。「ビジネスの創造」とはファッション関連3業種である繊維・衣料産業、製靴・皮革産業、宝石・ジュエリー産業の競争力を強化する計画である。そこで、第2章では繊維・衣料産業を取り上げ、この産業を取り巻く国際状況を概説する。そして衣料産業がサプライチェーンを改善し、グローバリゼーション時代に対応する構造改革に取り組んでいる状況について解説する。第3章は宝石・ジュエリー産業の現状と競争力強化計画を取り上げる。バンコク・ファッション・シティ計画は、産業競争力の強化計画の中でも、とくに人材の育成に力をおき、デザイン力やブランド開発に結び付くことを狙ったものである。それは、タイの宝石・ジュエリー産業がもはや下請け生産や委託生産では生き残ることが出来ず、デザイン力やブランドを開発して直接的に消費者に結び付くことを企図したものである。第4章では製靴・皮革産業を取り上げる。製靴・皮革産業の競争力強化プログラムの特徴は、国際的な下請け生産の基地から自前のデザインやブランドの創造を目指し、専門家による個別のビジネス・プランを提案しているところにある。 また、バンコク・ファッション・シティ計画に関する資料と、AFTAの影響について考察したタイ開発研究所(TDRI)の3つの報告書を翻訳した。タイ工業連盟(FTI)は、「AFTAの発効がタイのファッション産業にどのような影響を与えるか」について、タイ開発研究所に調査を依頼した。タイ開発研究所は、ファッション産業を(1)繊維・衣料産業、(2)宝石・ジュエリー産業、(3)皮革産業に分け、それぞれの産業実態と国際競争力について調査し、1996年にタイ工業連盟に答申した。本報告書では、その3本の報告書の翻訳を納めている。また、「バンコク・ファッション・シティ構想に関する資料」では、タイ工業連盟の機関誌に載った論文とインタビュー記事、『トラキット・カーウナー』誌の特別論文、そして産業振興局の『ウサハカム・サーン』誌の論文の計4本を翻訳・紹介したものである。これらの論文やインタビュー記事により、バンコク・ファッション・シティ計画の基本的内容を掴むことができるのではないかと考える。
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