研究概要 |
2004年12月にフランスのパリとリールにおいて,就労困難層についての現地調査を実施した。調査の重点をパリに置き、それとの比較対象となるリールでは小規模の調査を行なった。パリでは,ホームレス生活者の問題とパリ市北部にある19区の就労困難な人々が多く暮らす地区への生活・就労支援活動について調査をし(16の団体・研究者・行政機関担当者へのインタビュー),リールでは,行政機関担当者へのインタビューを行なった。この調査の成果について,研究代表者はある研究会で中間報告を行なった(「社会的排除とコミュニティケア」研究会,代表:福原宏幸,2005年1月21日)。ここでの議論を踏まえてさらに調査データの整理・取りまとめを進めている。 他方,フランスをはじめとする欧州各国の雇用政策ならびに社会的保護政策は2000年以降EUの雇用政策・社会的保護政策に大きく影響されるようになってきたことから,EUのこれらの政策についても調査を行ない,その成果の一部は雑誌論文としてとりまとめ,発表を予定している(『部落解放・人権研究』163号,2005年4月)。 さらに,こうした問題についてフランスをはじめEUでは,「社会的排除」と「社会的包摂(あるいは社会的結束)」というキーワードのもとに概念的な把握を行なうようになってきているため,これについての研究も進めた。その一つの成果は翻訳書の刊行である((Bhalla, A.S./Lapeyre, F., Poverty and Exclusion in a Global World, Second Revised Edition, Palgrave Macmillan,2004)。この著作の日本語訳は,『グローバル化と社会的排除』というタイトルを付して,研究代表者と中村健吾(大阪市立大学・大学院経済学研究科・教授)の監訳により2005年4月に昭和堂より出版される。 以上のように本年度は,一方で現地調査を実施するとともに,他方では主題研究の前提となる重要な要因についての研究・調査も行なった。次年度はこれらをもとに現地調査のデータ分析とその取りまとめを行なう予定である。
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