平成16年度の研究では、まず日本のソフトウエア産業の現状を統計書、文献、インタビューを通して明らかにした。日本のソフトウエア産業、特に中小規模のソフトウエア産業が厳しい受注競争に直面し、価格切り下げ圧力の中で、海外、特に中国や東南アジア(フィリピン、ベトナム等)でのオフショア生産に乗り出し、アジア在住(特に中国)の企業へのアウトソーシングを増加させつつある状況を明らかにした。 次に、フィリピンでは今後の成長産業として、ICTサービス産業を位置づけ、その成長・発展への期待を高めているが、フィリピンICTサービス産業も今後の成長、発展にとって多くの課題を抱えていることを明らかにした。その1つは、現在フィリピンで急成長している部門が、コールセンターやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などの労働集約的な、低い技術レベルのものである点である。この部門は特に米国企業からのアウトソーシングとして急成長しているが、その成長の持続性については問題が多く、その解決のためにはフィリピンのITソフト技術者の能力向上が不可欠、急務となる点について研究した。 他方、日本からは、より高度な技術を要する、ソフト開発、設計、アニメーション等がオフショア生産されているが、まだまだシェアとしては低い。本年度の研究では、日本とフィリピンITソフトウエアの分業関係の深化・発展にとって必要な諸課題として、フィリピンで側でのIT教育の高度化、ITソフトエンジニアの能力アップ、日本語能力の向上、日本側での問題として日系企業の商習慣の問題点(仕事内容の不明瞭性、度重なる仕様の変化、語学力の不足等)について調査、研究を進めた。特に本年度はフィリピンの「ITソフトウエア技術者の人材育成状況とその改善策、それに対する日本からの経済協力の進展状況について、調査・研究を進めた。
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