研究概要 |
本研究では,まずソシアル・キャピタルと都市・地域経済の関係について,理論的考察を行った.実際には,ソシアル・キャピタルと広義の地域デザインとの関係について,都市・地域空間のモザイク化を展望しつつ「生活の再ネットワーク化」をキイワードに検討を行った.こうした,いわば理論的整理を行ったうえで,社会的企業(コミュニティ・ビジネス)の存立基盤と現下の状況について,わが国の実態に関する典型事例のヒヤリング等によって明らかにすることを試みた.ここでは,都市生活における社会的企業の役割と課題について,その台頭の背景やメカニズム,政策課題等について検討を行った.ここでは、各主体がソシアル・キャピタルを意識することなく、しかし、かかる役割についての十分な認識のもと活動が展開されていることが明らかとなった。今後、わが国においても急速な発展が予見される社会的企業の存立基盤の一端をうかがうことができ、政策的にも重要なインプリケーションが得られた。さらに,企業が社会的領域と連携する活動として,CSR (Corporate Social Responsibility)について,海外を含む企業群にヒヤリングを行った.本調査さは,CSRが単なる社会貢献や地域貢献として行われているのではなく、企業の本来のビジネスの核心部分に今や位置づけられており、かかるCSRとビジネスの接点において戦略的な経営が展開されている実態を明らかにした。その意味で,企業の取引関係と社会的ネットワークの相関性が明らかとなったといえる。本研究の都市・地域政策への含意として,空間のモザイク化に呼応するクラブ空間の形成においてソシアル・キャピタルの醸成はきめわめて有効であることを示した.
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