研究概要 |
この研究の目的研究結果は次の通りである。 1.第三のイタリアの産地システムがイタリア南部にどのように形成されているか。 第三のイタリアの産地システム柔軟な専門化を特徴としてきた。しかしグローバリゼーションによって伝統的な産地システムは崩れつつあるが、新しい型のイノベーション、生活文化と一体となった生産システムとして新たな展開が始まっている。1990年代後半から、南部では中央政府主導型の南部対策に替わって地方政府主導型の地域開発政策が進められているが、その際、第三のイタリアの産地システムの導入を強く意識して進められている。 2.イタリア南部における新しい開発組織と開発方法 イタリア南部における新しい地域開発組織を代表しているのがPatto Territoriale(地域協定)であるが、州政府、県、自治体そして民間の連携によって、産地のインフラ整備,都市再生,中小ビジネス起業,雇用拡大など6つのアクションプランを進めて、地域経済活性化に貢献しようとしている。今回のイタリア南部実態調査は、ナポリ南部サレルノ県ノッチェーラ・インフェリオーレ市にある"サルノ・ノッチェーラ地域農業関連就業のための地域協定"を事例に行った。 3.イタリア南部の産地システムとEUやアメリカのそれとの比較 ヨーロッパでは、RDA(地域開発エイジェンシー)と総称される新しいタイプの組織が地域開発に大きなカを発揮している。この研究では、Patto Territorialeもその一つであることを実証した。また、ボストン周辺企業集積の実績分析を通じて、シリコンバレー地域とは異なった歴史的に密度の高い企業集積と人的ネットワークの地域特性を明らかにした。 ヨーロッパやイタリア南部の新しいタイプの地域開発組織は、日本において新しい時代の新しいタイプの地域開発を進めていく上で、多くの示唆に富んでいると考えられる。
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