研究課題/領域番号 |
16530189
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経済政策
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
岡村 與子 大東文化大学, 経済学部, 教授 (20281016)
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研究分担者 |
松川 滋 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (50107108)
瀧 敦弘 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (40216809)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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キーワード | 金融政策 / インフレーション・ターゲット / 複数均衡 / 自然利子率 / トレンドの除去 |
研究概要 |
1章においては、新古典派フィリィップス曲線に直面する政策当局が、インフレ目標と自然生産量以上の産出量をともに政策目標とするとき、生じる均衡の性質を検討し、政策的含意の大きな結果を得た。すなわち、 (1)commitmentを伴う最適な均衡は、Barro-Gordonモデルに対応する唯一のものであり、そこでは目標インフレ率を常に実現することが求められる。 (2)裁量の均衡は2つ存在し、activeな金融政策が採用される均衡ではデフレが生じ得る.この可能性を指摘したことが1章の最も重要な成果である。 (3)passiveな金融政策を伴う均衡はかなりの率のインフレを伴う可能性がある。ただしインフレは政策当局が自然生産量以上の産出量を政策目標としないかぎり発生せず、しかもこの均衡は安定である。 (4)経済の不安定性の原因が政策当局の過度な生産量を目標とする政策ではなく、外生的な撹乱ならば、activeな金融政策よりもpassiveな金融政策のほうが望ましい。 (5)インフレーションターゲッティングはpassiveな均衡にある経済において、インフレ率を引き下げるために用いると成功するが、activeな金融政策が採用されるデフレ均衡において、インフレ率を引き上げるために用いても成功する可能性は少ない。これは後者が不安定な均衡だからである。 (6)政策当局が生産量の安定にウエイトを置いた政策運営を行う場合には、景気に対して公衆が期待しているよりも常に過大な政策反応を選択する可能性がある。 また、2章においては、政策反応関数に利用するデータの整備を進めるために、1985年第1四半期から2003年第4四半期のデータについて実質GDP,非耐久消費財+サービス消費、コール・レート、および時効為替レートの各変数の単位根の有無を検証し、トレンドが存在するとされた実質GDPについて、3つの異なる非構造型のトレンドの除去方法でトレンドの除去を試みた。トレンドが除去された系列を用いた政策反応関数の推定は今後の課題として残された。また、3章においては、金融政策当局の政策シナリオの策定や実行のために重要となる、自然利子率についての概念や推定方法を概観した。自然利子率の理論的な定義や導出方法に関する問題点も指摘されたが、これらの問題点の解決や、実際のデータから日本の自然利子率を推定することなどが課題として残された。
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