1.申請時の計画に示した通り、17年度は、16年度にデータベース化した統計や資料の解析を行い、前期高齢者と後期高齢者の生活や経済条件、健康状態などの相違を明らかにし高齢社会の成熟化に伴い、これまでの前期高齢者中心の高齢社会で観察されていた高齢者の貯蓄行動に対する研究結果や、それに基づく政策運営のあり方がどのように修正されるかに関して研究を行った。その成果の一部については、図書(『少子高齢化の死角』)として出版した。 2.前期高齢者と後期高齢者の収入、消費、家族構成、健康状態、生活意識などの相違について、16年度に整理したデータベースを利用し、両者の相違が貯蓄行動(積み立てだけでなく取り崩しに関しても)にどのような影響を与えるかについて分析を試みた。その結果、今後、後期高齢者が増加し、日本における高齢社会の成熟化が進んでいくに伴い、日本における高齢者の貯蓄率が、マクロ的な日本の貯蓄率に対してマイナスに寄与する可能性があることを、主として統計的に検討した。また、日本における高齢化の主因が、かつての長寿化から出生率の低下による少子化に移行していると見られることから、少子化の要因および政府・企業による出産・育児支援策について国際的な比較も視野に入れて文献中心に調査を行った。 3.高齢社会の成熟化に伴う社会保障のあり方については、「高齢者は平均的にみれば収入や資産面で『裕福』である」という通説について批判的に検討するとともに、福祉政策をめぐる「小さな政府論」の陥穽についてグローバル化とマクロ経済政策の視点から研究を行い、その成果の一部を図書(『グローバル化と日本の課題』)として出版した。 4.なお、日本における「ライフサイクル仮説」が今後成立するか否かについては、これまでの議論を整理する目的で、マクロ経済および所得分配政策に関する文献をサーヴェイした。
|