本研究は、水俣病発生原因企業チッソの企業の特質を労使関係の面から明らかにし、負の遺産としての水俣病事件の解明に社会科学から貢献することを課題とする。 本年度は、昨年に引き続き、2005年8月、水俣市内に開設された熊本学園大学水俣学現地研究センター一に移管された新日窒労働組合に保存されている組合結成(1950年)以降現在に至るまでの資料の整理収集、ならびに関係者からのヒアリングを実施した。資料整理作業に関しては、所蔵資料の簿冊単位での整理ならびにカード化作業を終えた。コンピュータ入力にまで至らなかったが、作業はほぼ終えた。 また、関係者との調整を重ねた結果、2006年度秋より、退職労働者が数多く参加する労働史研究会を定例的に開催できる運びとなった。組合資料に基づき、フォーカスグループインタビュー方式で事実関係を一つ一つ明らかにすることができている。また、2007年2月には、業者との折衝を重ねた結果、チッソ(日窒)の財務資料を明治末期の創業期より入手可能となり、今日に至るまでの財務にかかわる報告書類をそろえることができ、分析に着手したところである。 このような新資料の発見や新事実の解明の手がかりが得られたことで、これまでの分析枠組みを維持するにしても慎重な検討が必要とされることとなっている。今後の課題をとして新たな研究の地平を開くことができるものと確信している。
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