研究課題
基盤研究(C)
世界各地域で締結されている自由貿易協定(FTA)は、近年急速にその数を伸ばしている。FTAが地球規模の自由貿易を促すのか、或いは妨げるのかという問題を巡っては熱い論争が繰り広げられているが、WTOを中心とする多国間の貿易自由化交渉があまり進展していないのも事実である。本研究では、2001〜2015年の期間をカバーした10地域・26部門の動学的な計算可能一般均衡(CGE)モデルによって、「ASEAN・中国」、「ASEAN・日本」、「ASEAN・韓国」、「日中韓」、「ASEAN+3」、「ASEAN・EU」の自由貿易協定(FTA)のシミュレーションを行い、多国間の完全貿易自由化(GTL)と比較した。主な結果は、以下の通りである。1.これらのFTAシナリオにおいては、すべての加盟国に恩恵がもたらされるが、GTLと比較した場合、経済厚生の上昇率は比較的小さい。FTAのシナリオの中では、ASEAN+3 FTAの影響が最も大きく、東アジアにGTLの恩恵の56%をもたらし、世界全体にGTLの恩恵の23%をもたらすという結果を得た。2.東アジア諸国にとって、経済成長率および輸入増加率の高い中国とFTAを締結することが一層有益で、世界貿易自由化に到達するまでの飛び石となるという予備段階の結果を得た。3.現在行われているFTAの交渉では、農産品の多くが関税撤廃の対象ではない。すべての財・サービスが加盟国間で自由化されたケースと比較して、農産品が自由化されないと仮定したシナリオの下での経済厚生の改善は、50〜75%減少する。4.ASEAN+3 FTAの下で、日本は、繊維・化学製品・鉄鋼・金属製品・機械製品・自動車などの生産量が増加し、農産品・化石燃料・加工食品・衣類・皮革製品・その他の輸送機械の生産量が減少する。この結果は、一部の産業を除き、GTLが個別部門に与える影響に極めて類似する。
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FTAs in East Asia : Trade Link Models, Vol.1(eds. by M. Toida and J. Uemura), IDE-JETRO
ページ: 451-475
Journal of Asian Economics Vol.15・No.4
ページ: 697-712
Journal of Asian Economics Vol.15, No.4