昨年度の研究成果を踏まえ、福島大学ディスカッションペーパーとしてまとめた。その上で、日本金融学会及び、日本経済学会といった全国大会で研究報告を行った。また、論文は英文で書かれているので、Asia-Pacific Economics Associationと言う国際学会でも発表を行った。さらに、本学および他大学の研究会にも招かれ、学会の通常の割当て時間よりも長い形式で報告する機会も得ることが出来た。こうして得られた多くのコメントをもとに、データの追加・再推計を行った。 主な、改訂点は、より個別企業の事情を加味した上で回帰分析するという作業であった。そこで、有価証券報告書の決算数値だけでなく、文章記述欄にも目を通し、金属などの商品に関する特徴的な取引の動きも把握し、また、個別企業の資本比率などの説明変数を加えることによって、回帰分析の説明力を高めることが出来た。このような点をまとめ、論文をあらたな改訂版として作成した。 今年度当初の段階では、金融市場の変数により、企業行動がどのように変化するかに注目した論文であったが、今年度末の段階では、市場の変数に加え、個別企業のミクロ的事情も考慮に入れた分析となった。また、こういった追加点が、むしろ、従来の市場変数の推定結果をより強固なものになる結果となった。 経済学的解釈から言えば、メルツァー効果が、マクロ的影響だけでなくミクロ的影響も含めて整合的な形で検証出来た。近年、金融市場と企業金融の関係は、政府の研究機関を始め多くの研究者が関心を寄せている。改訂にあたっても、学会参加などで知り得た関連報告も視野に入れ、他の研究成果との比較の中で、今回の研究で明らかになった点をより鮮明なものにした。来年度は、関連する分野への幅を広げると共に、より完成度を高めた研究としてまとめていきたいと考えている。
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