研究概要 |
日本経済の発展とともに金融システムの役割がどのように変化してきたかについて、とくに、最近の20年に焦点をあてつつ、その分析手法の開発とそれを用いての解析を行うことが、本研究の目的である。金融機関の行動原理は、メインバンクシステムをとりながらも、1990年のバブル経済崩壊後は、(i)金融機関自らの意志で変更され、さらに、(ii)政府の新銀行政策(護送船団方式から競争原理の導入への変更)に伴い変更され、そのうえ、(iii)BIS規制による国際金融環境の透明性強化により変更されてきた。しかし、こうした金融機関の行動原理が変更されたにも関わらず、その経済発展への影響に関しては全く解明されてこなかった。また,そのような金融機関の取引環境を支える金融市場も整備され充実されてきた。しかし、このような金融環境の変化と経済発展の関係を分析する動学的な解析手法が確立されていない。こうした理由で、金融システムが経済発展に与える影響を動学的に解析する研究は、今後の金融システムを設計するうえで有益な情報を提供する。 分析手法としては、金融市場の動学的効率性を解析すべくGARCHタイプの時変係数や非対称効果を組み込んだモデルをカルマンフィルターの手法を用いて開発した。さらに、GDPとその生産に必要な資金調達額との関係を確率フロンティア関数により推定する方法を開発した。こうした開発手法を用いて、最近の金融システムの充実と経済発展の関係を解析した結果、金融市場はバブル崩壊後急速に効率性が上昇し、さらに、生産の非効率性も解消されつつある。また、バブル崩壊後の金融政策は社会的厚生を指標とすればパレート改善的であり、これまでの政策評価とは異なる。また、金融市場の充実とともに、政府の財政資金の配分が経済成長に大きな影響を与えることが判明した。
|