今年度は、国債先物のティック・データを用いて公開情報の影響を調べるイベント・スタディにより効率性の検証を行った。 東証で2000年9月に国債先物の夜間取引が開始された後の期間である、2000年10月から2002年3月末までのティック・データを用い、GARCHモデルなどによって国債先物市場の収益率とそのボラティリティに対してマクロ経済指標のアナウンスメントがどのように影響を及ぼしているかを調べて、市場のセミストロング・フォームの効率性や構造を分析した。指標公表の影響を見るには実績値と予想値の差が重要であることを考慮して、その差であるサプライズをブルームバーグ社報道の予想値を用いて求めた。 計測結果は次のとおりである。OLSでマクロ経済指標のアナウンスメントの影響は国債先物の収益率とボラティリティに対してほぼ半数以上が有意であり、かつ有意性は持続する。3次関数法とFFF表現を用いると、指標公表の影響はより長く持続する。9時に発表される指標の収益率への影響は0.5時間持続するが、ボラティリティには2-3.5時間後まで、14時に発表される指標は収益率とボラティリティへ3.5時間続く。またボラティリティへのマクロ経済アナウンスメントの影響をGARCHモデルで分析したが、ボラティリティの分散が半分戻るのに要する時間は1時間以上であることが多い。以上を総合して、市場が効率的であるとは見なせない、と判断した。
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