平成17年度は、日本国債先物のビッド・アスク・スプレッド、収益率のボラティリティ、出来高のそれぞれのティック・データを用いて、マーケット・マイクロストラクチャの観点から、東証における国債先物市場の取引制度と価格形成の関係を明らかにすることを試みた。 マイクロストラクチャ理論を援用して、スプレッド、ボラティリティ、出来高の関係のファクト・ファインディングを行うとともに、ティック・データから分刻みのサンプルを取り出し、それらが示している現象をマーケット・マイクロストラクチャ理論により解釈し、また、それぞれのイントラデイの動きを公表されるマクロ経済指標によって説明できるかを回帰分析を用いて検討した。 得られた結果は以下の通りである。取引中断仮説では、取引が再開された後、時間の経過につれてボラティリティなどは逓減するが、本研究では、ボラティティのイントラデイの動きを取引中断仮説で説明した。また、スプレッドと出来高は取引参加者の行動を考慮に入れると説明が可能となった。さらに、マクロ経済指標を用いると、ボラティリティと出来高のイントラデイの動きを説明できるが、スプレッドの説明は困難であった。 残された課題としては、ボラティリティ、出来高、スプレッドの関係についてのさらなる詳細な分析が必要である。また、マクロ経済指標の公表がボラティリティ、出来高、スプレッドに与える影響をGARCHモデルもしくはその拡張モデルで分析する必要もある。さらに、日本国債先物を取り引きしている他市場との比較を行い、最適な市場デザインを得る手がかりとすることも可能であろう。
|