平成18年度は、東京証券取引所(東証)とシンガポール取引所(SGX)の双方で取引されている日本長期国債先物の価格変動の共通点や違いを明らかにすることにより、マイクロストクチャの観点から市場間比較を行った。東証では板寄せとザラバ方式の組み合わせを使っているのに対し、SGXではオープン・アウトクライ方式を採用していた。 これらの市場におけるティック・データから得られるボラティリティとスプレッドを用いて両市場の結果を比較した。また、両市場に現れる現象をマーケット・マイクロストラクチャ理論によって解釈するとともに、両市場でボラティリティやスプレッドに差異が認められるが、それらは約定の仕組みの違いなどによって生じているかどうかを検討した。 得られた結果によれば、ボラティリティにはSGXでも東証と同様、U字型の動きが観察された。両市場の約定の仕組みが異なるにもかかわらず、イントラデイのボラティリティは同様の動きをしているので、このような動きを引き起こす要因は、板寄せとザラバの組み合わせではなく、むしろ情報の織り込みに時間がかかることであろうと考えた また、取引コスト・流動性を示す尺度であるビッド・アスク・スプレッドからは、SGXよりも東証の方が、取引コストが小さく、流動性は高く、情報の非対称性は小さい、との結果が得られた。したがって、マイクロストラクチャの観点からは、投資家はSGXよりも東証へ参加しやすいと判断できよう。
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