研究概要 |
本年度は地域間の租税競争をモデル化するための基本的な枠組みの構築を図った.このために,標準的なヘクシャー・オリーン・モデルに公共財を組み込んだモデルを構築した.さらに,そこで公共経済学における基本的な命題の一つである柴田・ウォーの中立命題の結果が成立するのかを検討した.この結果,公共財の中立命題は標準的なヘクシャー・オリーン・モデルでも成立すること,所得移転が最終財と生産要素の形で成される場合とでは成立条件がことなることが明らかとなった.また,柴田の第二中立命題も標準的なヘクシャー・オリーン・モデルにおいて成立することが明らかとなった.この結果は,平成16年10月に開催された日本財政学会において報告された. 同時に,不完全競争下にある地域間租税競争の政策的含意を検討するため,企業の一部が公有化されているような混合寡占モデルにおいて,公的企業の民営化が厚生に与える影響を検討した.この結果,公的企業の民営化は,もしも政府が租税・補助金政策を自由に活用できるならば,当該国にとってもまた,公的企業が立地している国へ財を輸出している国にとっても望ましいことを明らかにした.しかしながら,当該国が原産地主義もしくは居住地主義といった形で,不完全競争企業の生産する財に課税している場合,あるいは外国からの輸入に対して輸入関税を課している場合には,民営化が厚生に与える影響は,企業の生産技術や企業数に依存して異なる事が明らかとなった.この結果は,平成16年8月に開催された国際財政学会で報告された.
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