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2005 年度 実績報告書

地域間租税競争下にある政府間の政策協調による厚生改善の可能性について

研究課題

研究課題/領域番号 16530208
研究機関富山大学

研究代表者

中村 和之  富山大学, 経済学部, 教授 (60262490)

キーワード租税競争 / 源泉地課税 / 居住地課税 / 生産の効率性
研究概要

本研究では,租税(財政)競争下にある地域間の租税(支出)政策が資源配分に与える影響を考察した.本年度は特に標準的な租税競争モデルの枠組みを拡張して租税競争の政策的な含意を考察した.具体的には,地域の生産活動に伴って負の効用をもたらすような財が生み出され,地方政府が供給する公共サービスはこの不効用を減少させるために供給されるものとして,そこでの租税競争が生み出す資源配分上の帰結を検討した.このような公共サービスの態様は,警察,消防,環境保全,公衆衛生といった地方政府が現実に供給している多くのサービスに当てはまると考えられる.
分析の結果,(1)地方政府が源泉地原則に基づく資本課税を政策手段として持っている場合,公共サービスの供給量が過大にもなりうること,(2)地方政府が居住地原則に基づく資本課税(モデルでは一括税と等価)を政策手段として持っている場合,源泉地原則に基づく課税がゼロに制約されているなら,公共サービスの供給量は過少になること,(3)租税競争の状態にある場合には,たとえ公共サービスの生産性が改善されても地方政府の戦略的な行動のために却って均衡での厚生水準が低下してしまう可能性があること,を明らかにした.
これらの結果から,分権的な地方財政制度の下では,(3)地方政府が裁量的に操作できる政策手段を源泉地課税もしくは居住地課税のいずれか一方に制限することは望ましくないこと,(4)政策手段の適切な割り当てなしには生産技術の改善がもたらす正の厚生効果を十分に享受し得ないこと,が政策的な含意として導かれた.
上記の研究のほかに,共通代理人モデルの枠組みで,地方財政制度における中央政府と地方政府間の権限と財源の配分について考察し,その成果を国際財政学会(IIPF)で発表した.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2006 2005

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] 租税競争と公共部門の生産性2006

    • 著者名/発表者名
      中村 和之
    • 雑誌名

      富大経済論集 51・3

      ページ: 81-97

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [雑誌論文] Endogenous Decentralization and Separation of Decision-making Structure in Central Government2005

    • 著者名/発表者名
      Kota Sugahara, Minoru Kunizaki, Kazuyuki Nakamura
    • 雑誌名

      Proceedings of the 61^<st> Congress of the International Institute of the Public Finance (CD-ROM)

      ページ: Session19, Paper 57

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公開日: 2007-04-02   更新日: 2016-04-21  

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