本年度の研究目的に沿う形で、具体的な事例を取り上げた実証研究を行った。主として取り上げた対象は、社会基盤としての医療サービスの供給体制と、社会的資本整備の財源調達のための徴税に関わる活動体制である。 分析は、データ包絡分析(DEA)法を用いて現状での各供給体制の効率性を測定し、効率性に影響を与える要因を抽出することによって、望ましい社会資本整備と国土形成のあり方を求めることを通じて進められた。国土利用のあり方に着目する目的から、現状下の効率性に影響を与える要因として、地域人口、面積に焦点が当てられている。 社会資本基盤としての医療供給体制としては、わが国における2次医療圏の効率性が測定された。従来より、2次医療圏の設定が、基本的に地域ごとの病床数を調整するために行われており、人口や交通事情など医療サービスの水準に影響すると思われる要素を十分に勘案していないために、非効率な体制となっている可能性が指摘されている。本研究によって、上記の危惧が定量的に捕捉され、人口と面積が効率性値に有意に影響を与えることが明らかにされた。 社会資本整備の財源調達の主たるものに税があるが、本研究では、現行の都道府県という区割りのもとでの、税の滞納と不納欠損の情報をもとに地方税の徴収力を測定し、自治体間での税徴収力の格差が発生する要因を抽出している。そこでは、税徴収に係る費用投入を考慮した上での税徴収活動の効率性がデータ包絡分析(DEA)によって測定されると同時に、起債制限比率を指標とした財政要因と地方税の徴収力との関係について明らかにされている。全国的に見て、現年度課税分についての滞納率が低下しているという傾向は見られず、滞納された税については、年度内に20〜30%程度が整理される程度であること、全国的にみて課税調定額の4%程度(約5000億円)が翌年度に繰越されており、繰越された税のうち5〜20%は、不納欠損として納税義務の消滅を受けていることなどが定量的に明らかにされている。
|