研究概要 |
中小企業における資金制約のひとつであるDiscouraged Borrowers(借入意欲喪失者)の理論的実証的研究として、モデル分析と実証分析を行った。 (1)理論分析の基礎的作業として、Kon-Storey(2003)モデルに関連するその後の研究展開を示す論文の収集を行い、発展をフォローした。その結果、欧州、北米でこのモデルを用いた零細企業向け貸出を分析する研究が発展していることがわかった。 (2)Discouraged Borrowersの基本モデルの拡張を行った。わが国中小企業金融の特色を取り入れた理論モデルの作成の試みを行った。とくに、中小企業の高リスク借手を顧客とするノンバンクの役割を考慮するモデル作成を試み、試論的なモデルを作成できた。その結果を、今喜典「ディスカレッジドボロワーズとマネーレンダー」青森公立大学ディスカッションペーパー、No.35,(2007年3月)、にまとめた。改訂した内容を『青森公立大学経営経済学研究』に公表予定である。 (3)実証研究面では、量的な分析を行うための準備として、『貸金業白書』のデータを整理し、企業向け貸金業などの貸出変化を中心に、データ・ベースを作成した。この内容は限定的であるが、数すくない資料であるので前述の論文で理論と合わせて説明した。とくに、観察される銀行貸出と貸金業貸付の変動の方向が代替的であり、理論モデルの予測と整合的なことを明らかにした。
|