先進諸国においては、経済全体のリスクの大半が銀行に滞留するという間接金融からそのリスクを本源的投資家(個人投資家)に広く負担してもらうという直接金融への転換が進行しつつあり、しかもこの転換は本源的投資家が投資信託や年金基金などの機関投資家経由で株式投資を行うという「機関投資家現象」によるところが大きい。本研究では、この「機関投資家現象」は、1)本源的投資家の本来の持つリスク回避度を低くし、2)リスク配分をより効率的にした、といった問題を理論的および実証的に明らかにすることができた。 1)に関しては、CAPMなどをはじめとする現代ファイナンス理論では投資家のリスク回避度を所与のパラメーターまたはその投資家の持っている富の量に依存するものとして取り扱うのが通常だったが、本研究では、『現代ファイナンス理論をベースにしながらも、投資家のリスク回避度に影響を与えるリスクのプーリングについてその影響の可能性と程度を詳細に検討した。2)に関しては、さらにa)エクイティー・プレミアムの低下から見出される「機関投資家現象」によるリスク配分の効率化は、情報劣位な本源的投資家と情報優位な機関投資家間の利害相反すなわちエージェンシー問題の発生を代償としていること、b)この両者間の関係を律する資本市場関連の法ルールが本源的投資家の利益の保護を指向するほど、「機関投資家現象」によるリスク配分効率の向上がより効果的になること、という二つの結論を導いた。
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