研究課題
基盤研究(C)
先進諸国においては、経済全体のリスクの大半が銀行に滞留するという間接金融からそのリスクを本源的投資家(個人投資家)に広く負担してもらうという直接金融への転換が進行しつつあり、しかもこの転換は本源的投資家が投資信託や年金基金などの機関投資家経由で株式投資を行うという「機関投資家現象」によるところが大きい。本研究は、「機関投資家現象」がリスク配分をより効率的にするという問題を理論的および実証的に明らかにすることである。本研究では、ここ20年間余り以来、投資信託や年金基金といった新しいタイプの機関投資家が資本市場とりわけ株式市場での存在感を高めてきたという機関化現象を確認し、その背景や原因を取り上げたうえで、「機関投資家現象」のリスク配分への影響を分析した。その結果、投資信託会社等の機関投資家が投資先企業のリスクを束ねてから投資家に分担させるという意味のリスクのプーリング機能を果たしており、投資家による直接投資の場合に比べて、上述の機能を持つ機関投資家経由の集団投資の方がエクイティー・プレミアムの低下に寄与するであろうと結論づけた。また、近年、ベンチャー企業の創生と成長を促進する必要性が高まるなか、ベンチャー企業や中小企業の新規株式公開すなわちIPOにおいて証券会社や機関投資家がどのような役割を果たすかをも分析し、情報の量と情報分析能力に関して優位に立つ主幹事証券会社と機関投資家にはIPO企業と投資家の間の情報非対称性やIPO企業の上場後の株価ボラティリティ(リスク)を低減する役割があるということを示した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
日本証券経済研究所『証券経済研究』 53 54
ページ: 147-159 43-68
Japan Securities Research 53, 54
ページ: 147-159, 43-68