研究課題
基盤研究(C)
16〜17年度の研究成果を取りまとめると次のように要約できる。(1)20世紀初頭の目本における工業化と銀行の機能についての実証的分析の成果を内外の学会で報告すると同時に、その内容を英文論文にまとめた。この研究では、初期の工業化段階において、零細貯蓄を幅広く動員するという銀行の機能よりも、銀行と密接な関係をもつ企業の経営者に対して効率的経営に向けた規律を与える仕組みとしての銀行預金の属性(要求に応じて預金を解約するという機能)の重要性を浮き彫りにできた。(2)銀行融資中心の金融システムにおける企業統治(コーポレート・ガバナンス)のメカニズムを、日本政策投資銀行企業財務データバンクから抽出された統計に基づいて実証研究を進めた。とくに1980年代の金融自由化の進展と、企業と銀行との融資取引関係をベースとする企業統治の有効性の変容との関係に焦点をあてて分析した結果、金融自由化が企業統治メカニズムに及ぼした影響はほとんどないこと、銀行との取引関係が企業の経営効率性に及ぼす影響は、1980年以前の時期にも、その後の時期におけると同様に、有意でなかったという結論が得られた。このようなやや「意外な」結果が得られた原因は、高度成長期にも、また金融自由化が進められた時期にも、金融システムにおける競争が必ずしも有効でなかったためと考えられる。金融における競争と銀行や金融機関の経営行動に関する詳細な研究は、今後の研究課題として重要であると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (12件)
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