(1)(潜在的)国民負担率という政策指標の信頼性・有効性は測定分母となる国民経済規模の概念の信頼性に帰着する。本年度はまず、本研究の基礎的な研究課題である、国内総生産・市場価格表示国民所得・要素費用表示国民所得の相互乖離度を最新2002年暦年の国民経済計算統計を用いて、OECD加盟23力国の国際比較分析として行った。その結果、国民経済計算では固定資産税や法人事業税が間接税分類にもかかわらず、日本の間接税のGDP比は8.3%、市場価格表示国民所得比は10.4%で、アメリカとスイスに次いで低く、デンマークやスウェーデンのほぼ2分の1、西欧主要国(英・仏・独・伊)のほぼ3分の2であった。そこで、資本減耗をコントロールし、要素費用表示国民の対市場価格表示国民所得比を比較すると、日本のに0.91対し、アメリカは0.96、上記北欧諸国は約0.82、上記西欧主要国は約0.85であった。したがって、要素費用表示国民所得を分母とする場合は、この間接税負担率の格差だけで、(潜在的)国民負担率の水準は撹乱的な影響を受けることから、国際比較や時系列比較に耐えうる信頼性の高い政策指標を得るには、市場価格表示国民所得を分母とする必要性が確認された。 (2)課税と社会保障の依存関係については、OECD諸国の個人所得税と付加価値税の負担水準をまず調査し、これと社会保障給付、特に年金等現金給付水準との相関関係を考察した。国際比較によれば、国民負担率特に所得税・付加価値税負担率が高い国ほど、社会保障現金給付の水準が高い傾向が明瞭に読み取れた。この大きな理由は付加価値税の逆進負担の是正にあると考えられる。この推察は「今後日本で消費税率が二桁に引き上げられる場合に逆進対策を消費税の仕組みではなく、社会保障現金給付の充実で行うとすれば、国民負担率の上昇は避けられない」という予測につながる点で極めて重要である。
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