(1)間接税の扱い方が(潜在的)国民負担率の信頼性・有効性を大きく左右することが検証された。(イ)間接税は分子の国民負担には当然算入されるが、分母が要素費用表示国民所得の場合は、市場価格表示国民所得の場合より、純間接税(間接税-補助金)の控除分だけ負担水準が高く表示される。(ロ)間接税の定義・分類が租税制度と国民経済計算とで相違するにもかかわらず、現行算定方法では、分子の間接税は前者の分類、分母の間接税は後者の分類という整合性の欠如がみられる。(ハ)租税負担率が一定でも、間接税の価格転嫁の度合によっては、税制の直間比率の変化だけで負担率水準が不安定化する恐れがある。 (2)潜在的国民負担の概念構成で国民負担に加算される財政赤字のうち、制度的には財政法4条但書国債(建設国債)と地方債に、経済的には政府資本勘定の投資超過に相当する赤字部分は見合資産の裏づけがあるはずなので、本来除外されるべきである。ただ近年、その赤字部分は公共事業等の抑制から縮小している。むしろ、近年の公共政策で重要なのは、社会保障・教育分野での受益者負担(国民負担から除外される義務的自己負担)の引き上げによる負担率水準の抑制効果である。 (3)社会保障負担・給付に対する所得税、消費税等の課税方式には大きく負担減税、給付非課税、給付課税の三方式がある。このうち国民負担率への影響では、北欧諸国の給付課税方式がもっとも強い増加要因に、逆に、アメリカの負担減税方式がもっとも強い抑制要因になることが実証された。したがって、日本が国民皆保険制度の下で世代間・世代内公平の観点から社会保障給付の税負担増を図る場合は、国民負担率の大幅上昇は不可避と予測される。その場合の重要な経済運営課題は、「現役負担率(仮称)」(経済生産活動を担う労働・資本の負担率)に焦点を絞った抑制政策であることを提言したい。
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