まず、当該時期の汽罐製造工組合(United Society of Boilermakers and Iron and Steel Shipbuilders)文書をはじめとして、これまでに収集した史料を整理してインデクスを作成した。また、地域別技術者団体文書、および同時代の日本人技術者・職工による調査報告書類について若干の補足的な史料収集を行った。 第2に、これまでに作成してきた本研究課題に関わる草稿類および、研究会等での報告資料を元に、本研究全体の総括にとりかかった。当初の計画にしたがって、(1)管理革新・標準化の企業別の実態解明、(2)それを支えた技術者集団の特性、(3)管理革新・標準化の試みの技術的および経営的合理性の検証の三点に加え、(4)管理問題が発見され、主観的に構造化される型について、他国との比較を踏まえて考察した。そこでは、同時期のアメリカにおけるテイラーら科学的管理運動とは異なる文脈、すなわちクラフト的規制を前提にした状況において、管理問題が発見されたとの結論に達した。また、(5)19世紀末以降の技師層を中心とする管理問題の発見が、造船機械産業における職長の組織化(1860〜70年代)とそこでの「科学」を標榜した自己認識との連続性が解明された。 第3に、以上の作業を通じてえられたすべての成果を整序・構成したうえで、本研究の当初の研究目的や期待される効果等について再検討を加えた結果、管理権限の混乱の原因について充分に実証できていないことが判明したため、その点を詰めた上で研究成果報告書を作成する予定である。
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